種別:　古本 タイトル:　大正・渋谷道玄坂 著者:　藤田佳世 出版社:　青蛙房 発行年:　昭和53年 説明: 　ながいこと心にかけていた道玄坂の地図が八月の半ばにやっと出来上がった。思い立った日から三年に近い時が経っている。 　道玄坂の地図といっても現在のそれではない、 大正十年頃の地図である。しかし道の長さや幅も正確な縮尺ではなく、私が子供の頃、目にした町の当時の様子を懐かしさのままに書いたという、言うなれば郷愁の賦である。表通りの商家の家並みの不確かな個所は土地の古老や私と同年代をこの町に暮らした方々の助言を得て埋めたが、 あらましは自分の記憶をたよったので、多少の誤りはまぬがれないと思っている。 　それにしても、地図の上に並ぶ三百五十軒に近い家々に、一つ一つの思い出を持ち、そこに住んだ人々の顔までも思い浮かべられるということは、終生をこの町で暮らし得た私の仕合わせである。 　今は東急デパート本館の華麗な建物が占めている広い敷地も、つい先き頃までは大向小学校であり、大正五年にこの学校が出来るまで、この辺りは田圃であった。 　春一番の吹く頃になれば、手かごをさげてこの大向田圃に嫁菜や餅草を摘みにゆき、たんぽぽや、すみれの花にも手を染めた楽しい思い出を、その頃の子供はみな持っている。 （本書「道玄坂の地図」より） コンディション:C 箱入り。箱縁傷み、焼け、擦れ、汚れ。本体ビニールカバーあり。ページ焼け。古本シール剥がし跡あり。 コンディションについて A: 新刊並みにきれい。 B: カバーの折れや擦れがある。ページの焼けはない。 C: カバーの折れや擦れが目立つ。ページの縁周りに焼けがある。しみや汚れがある。 D: カバーの折れ、擦れが目立つ。ページ全体が焼けている。しみや汚れが目立つ。 E: カバーの折れ、擦れ、汚れ、破れが目立つ。ページ全体の焼けが強い。しみや汚れが著しい。