









種別: 古本
タイトル: シャネルの生涯とその時代(普及版)
著者: エドモンド・シャルル・ルー /著、秦 早穂子/翻訳
出版社: 鎌倉書房
発行年: 1990年
説明:
コレクションがはじまる何週間を、彼女のもとで、昼も夜も一緒に生きてみるべきだ。 朝、 一杯の水を飲んだきりで、 疲れ果てているシャネル。 それにもかかわらず、 彼女は夢中になっている。 満足しないのである。 彼女は絶対の完璧性を追求した。 他のクーチュリエならば、もうこのあたりでいいという通り相場を受けつけない。 マドモアゼル・シャネルの罵倒のひとり言。 この悪口は時たま口をついて出て、 会話のかわりともなった。糸、ウール、 布 むずかしい型 すべて彼女に抵抗するものとの、それは対話でもあった。
幾日、 幾夜、彼女は長い人生をこうして生きてきたのであろう。 人々の目には、偉大なシャネルがかくほどまでに苦しむ必要が、 ほんとにあるかどうかとさえ思えるのだった。
彼女がもっとも心に惹かれた、ひとりの女としての人生は見事に失敗し、 仕事の面では異常なほどの成功をおさめ、 そして極端な孤独の中に生きていた。 とはいっても、誰が、 彼女ほどの独立と自由を得たといえるだろうか。
彼女の宿命は、女の幸福を限定することによってのみ、 男と女の間の同等性を確保することだった。 この矛盾のテーマを提供することこそ、シャネルの生き方そのものであった。 仕事の面では男と同等、 いや、 しばしばそれ以上だったし、私生活では、もっとも解放された女だった。
モードが彼女の生涯の核であったとしても、 事業は愛よりも価値がなかったであろう。 愛の分野では、彼女はいつも幻滅しか知らなかった。
時たま力つきて、ひとり言をいうのを聞く時があった。 「ああ、もう死んでしまうわ」。 その言葉は、 心につき刺さるような響きがあった。 なぜなら、 なんといっても、袖つけや縁どりリボンをどこにつけるか、 上か下か、いや、それがたとえ、エレガンスにおける確かな哲学かどうかはしらないが、そんなもので死んでしまうのはちょっと行きすぎではある。
そして、この闘いが長くつづけば、 それだけ、 心の奥底の叫びもまたつづくのだ。
(本書の「序」より)
コンディション:C
箱入り。箱に保護のための透明カバー掛け。箱上部破れ、縁擦り切れ、擦れ、汚れ。角傷み。本体カバー擦れ。ページ微焼け。
コンディションについて
A: 新刊並みにきれい。
B: カバーの折れや擦れがある。ページの焼けはない。
C: カバーの折れや擦れが目立つ。ページの縁周りに焼けがある。しみや汚れがある。
D: カバーの折れ、擦れが目立つ。ページ全体が焼けている。しみや汚れが目立つ。
E: カバーの折れ、擦れ、汚れ、破れが目立つ。ページ全体の焼けが強い。しみや汚れが著しい。